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JKT48に見るイスラム教徒の断食文化

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写真:断食月にテレビ出演した際の衣装 公式Facebookページより

もくじ
◆はじめに
◆断食とは
◆禁じられるのは飲食だけではない
◆公演を行わない
◆公演以外のイベント
◆衣装にも気を使う
◆配慮の理由
◆さいごに

はじめに

インドネシアのアイドルグループJKT48は、ご存知AKB48の姉妹グループとして同一フォーマットで活動している。しかしいくつかの点ではしっかりとしたローカライズが行われていて、国民の9割を占めるイスラム教徒への配慮はその最たるものである。

イスラム教の習慣のひとつに、彼らの暦であるヒジュラ歴の第9月に行う断食がある。そしてこの時期にJKT48は公演を行っていない。

その理由を、断食とは何か、またなぜJKT48が断食月(以降ラマダンと表記)に公演を行わないのかを解説するのが本エントリの趣旨である。

断食とは

上記でも触れたが、イスラムの暦であるヒジュラ歴の第9月はラマダンといい、この月に彼らは断食を行う。西暦で言うと何月なのか?という疑問が生まれるが、毎年11日ほど早まり、およそ33年で季節が一巡する。2014年のインドネシアでは6月28日頃にスタートする予定となっているが、詳しい日程は直前に宗教省が決定する。

断食と言っても一ヶ月何も食べられない訳ではなく、日の出から日没までの間は飲み食いをしてはならない、となっている。逆に言うと、それ以外の時間は体力をつけるためにむしろ普段より多く食べることもあるほど。断食空けは食事を用意し、大勢で食べる。断食月用のプロモーションなども豊富で、インドネシアにおいて、断食月はレストラン業界にとっては、かき入れ時でもある。

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写真:断食明けを喜ぶアヤナのツイート

禁じられるのは飲食だけではない

そして断食という言葉だけ見ると食事のみの制限に思えてしまうが、性欲やその他邪な俗世の煩悩から逃れ、自分の生活を抑制する精神的な強さを得るという意味も持っている。

例えばこんな話がある。昨年、JKT48がファンと一緒にミュージックビデオを撮影するというイベントがあった。そのさいに元チームJの高城亜樹が曲に合わせてセクシーに腰を回すダンスのパートがあり、あるインドネシア人のファンがそれを見て「しまった、断食をやぶってしまった!」と冗談めかして叫んでたのが印象的だった。断食は食事断ちだけでなくて煩悩をもったらいけないのに、あきちゃの露出度高い衣装をえろい気持ちで眺めてしまったらしい。

参照:JKT48 3rdシングル「Fortune Cookie in Love - Fortune Cookie Yang Mencinta - 」ファン参加MV撮影レポート

他には断食を行うことによって自らの信仰を強く感じること、またイスラム教徒としての同胞意識を強めるなどの意味も持っているらしい。

公演を行わない

さて、なぜJKT48はラマダンに公演を行わないのか。それは上記でも触れた通り、断食は俗世の欲望から逃れるための慣習であるため、芸能活動はそぐわないもの。特にJKT48の公演は女の子が歌って踊るという、見方によっては非常に官能的なものである。この時期に公演を行っても反感をもたれるだけであり、さらに言うとメンバーたちの多くはイスラム教徒であるため、そこへの配慮でもあると考えられる。

断食明けの祭り、レバランとよばれる時期の休暇はイスラム教徒にとって年に一度の大きな節目であり、この時期はさすがに公演以外のイベントも行わない。日本人に例えると盆と正月がいっぺんに来たようなもので、ほとんどの商業活動が停止する。

公演以外のイベント

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写真:チャリティオークションの様子 写真一番右のステラのニット帽が約二万円で落札された場面
Jawa Pos "Topi Kembar Laku Mahal"より

一方で、「ミート&グリート」と称したイベントはラマダン中も行っている。メンバーのトークショーやムービー鑑賞会、またはチャリティオークションなどを劇場内で行う。

参照:
JKT48 ラマダン ミート&グリート(コンサートムービー鑑賞会)レポート
JKT48 ラマダン ミート&グリート チャリティーオークションのレポート

イスラム教の義務のひとつにザカートという義務的な喜捨(寄付)があり、信仰心が高まるラマダンの時期は、寄付額が大きくなる。そのため、この時期に行うチャリティオークションはイスラム文化と相性がいいと言える。

衣装にも気を使う

断食中の芸能活動は慣習にそぐわないとはいえ、中東に比べてゆるい宗教観であることも相まって、テレビ番組などは通常運転している。JKT48も断食月にテレビ出演することがしばしばあるが、結成当初はかなり気を使っていたようで、衣装も露出の少ない長袖シャツとパンツを着用していた(エントリ冒頭の写真参照)。

この写真を見ると、最前列で鑑賞している人たちの多くがジルバブと呼ばれるスカーフを着用していることがわかる。「インドネシアはでは、宗教観がゆるいからジルバブをつけてる人は少ない」という旨の話をする人が少なくないが、決してそんなことはないということがわかる。割合はわからないけれど、街ではけっこう見かけた。

配慮の理由

これだけの配慮をするのには理由がある。例えば2012年の出来事。レディー・ガガがインドネシア公演を予定していた。ところが一部のイスラム指導者団体がガガを「ポルノの象徴」とみなして公演に反対するとの見解を表明したり、他の強硬派集団が、ガガは「悪魔崇拝者」であるとして、公演が実施された場合、ブンカルノ競技場を襲撃すると脅迫する事案が発生した。

※公演中止をうけて抗議のデモを行う市民や、「信仰心に影響はない」と問題視しない穏健派団体もいるなど、強硬派の見解はかならずしも大多数ではないということは付け加えておきたい。

ほかにも、ミス・ワールド世界大会が強硬派の反対により、ビキニ着用の写真撮影のパートを取りやめたり、ジェニファー・ロペスが公演で衣装に配慮するなど、この手の話には枚挙にいとまがない。

個人的には、これら強硬派に目を付けられるほどにJKT48の知名度がアップした場合、真のインドネシアにおけるブレイクの証明にもなるのではないかと考えている。不謹慎かもしれないけれど。

さいごに

JKT48の公演を楽しみたい方は、ラマダンとレバラン休暇中の渡航はおすすめできない。航空券を手配する前に、時期を確かめておきたい。ちなみに今年のラマダンは6月28日から約一ヶ月、その後二週間はレバラン休暇のため、公演が再開するのは8月後半から9月頭にかけてだろうか。ぼくもその時期には行く予定なので、スケジュールをチェックするしだい。

参考:じゃかるた新聞
ガガ公演 中止決定 「治安確保できない」 主催者ついに断念 (2012年05月28日)
イスタナ前でファンが抗議 ガガ公演中止で (2012年06月05日)
保守系イスラム「中止を」  9月西ジャワのミス・ワールド 水着コンテストに猛反発 (2013年04月30日)